第5章 在宅患者への医薬品使用

1.医薬品の適正使用のための剤形、用法、調剤方法の選択

剤形の検討と選択
▪患者の状態を考慮した服用(使用)しやすい剤形の選択
▪手の障害者、視覚不自由者、嚥下困難者、認知症、寝たきり状態の患者の医薬品の服用について患者とその家族等から確認し、患者の状態に応じた薬剤を検討し、処方医に情報提供する。
用法の検討と選択
▪患者の生活環境(食事、排泄、移動など)を踏まえた用法(使用法)を照会する。
▪患者に応じた飲み忘れを防止する工夫を提案する。(カレンダーへの記載やアラームの活用等)
調剤方法の検討と選択
▪一包化、粉砕、簡易懸濁法の可否など患者特性を踏まえた調剤方法の検討
▪口腔内速溶型製剤(OD錠)、ゼリー状製剤の検討
▪経管チューブによる投与が可能か否かの確認(例:腸溶製剤は不可)

2.患者居宅における医薬品の使用と管理

医薬品の管理者及び保管状況の確認
▪患者の管理能力に応じた保管場所や保管方法の相談を行うと共に、管理者が必要な場合は家族等に保管・管理を依頼する。
▪冷所保存、遮光保存等の適正な保管・管理指導し、遵守できているか確認する。
副作用及び相互作用等の確認
▪高齢者は副作用の発現の頻度が高く、患者とその家族等から十分な聞き取り行うと共に、薬局への連絡方法など前もって説明する。
▪特に高齢者でリスクが高くなる薬剤を投与している患者については予測される副作用など説明し、副作用が発生した場合の対応について説明する
▪他科受診、一般用医薬品を含む使用医薬品等を確実に確認し、薬歴簿に記載、重複投与や相互作用の防止を行う。
▪コンプライアンスの悪い患者については服薬の意義を十分に説明すると共に処方医と相談を行い薬剤の変更、調剤方法の変更等を検討する。
連携する医療職・介護職が閲覧できる記録の作成
▪コンプライアンス、保管状況等について必要に応じ処方医に情報提供を行う。家族、看護、介護にあたる職員に対しても必要な情報を提供する。情報の提供については薬歴簿に記載する。

3.在宅患者または介護者への服薬指導

患者の理解度に応じた指導
▪患者の理解度に応じて薬剤に関する情報提供を行い、理解度を確認し、コンプライアンス遵守可能か判断する。
▪患者の理解度に応じて薬剤の表示方法、表現、記載方法等を視覚的、感覚的に理解できるよう工夫を行う。
▪必要に応じて服薬カレンダー、点字シール等の活用を行う。
服薬の介助を行っている介護者への指導
▪家族や看護、介護者に対して服用上の注意事項、保管・管理上の留意事項、服用後の症状の変化に対する注意等の必要な情報を提供する。

4.患者容態急変時に対応できる体制の整備

夜間・休日の対応方法
▪夜間・休日の緊急連絡先の周知しておく

第6章 医薬品情報の収集・管理・提供

1.医薬品情報の収集・管理

医薬品情報を担当する者の決定
▪医薬品情報収集・伝達は薬剤師が相互に行う。
▪担当者は開設者が薬剤師の中より任命する。
医薬品等安全性関連情報・添付文書・インタビューフォーム等の収集・管理
▪開設者は医薬品情報に関する書籍、雑誌、インターネット環境の整備を行う。
▪担当者はインターネットにより緊急安全性情報、添付文書の変更を定期的に確認し、他の薬剤師に随時情報を伝達する。
▪禁忌、相互作用、副作用、薬物動態、使用上の注意等

2.医薬品情報の提供

緊急安全性情報等の提供
▪各職員への迅速な提供
新規採用医薬品に関する情報提供
▪名称、成分名、適応症、用法・用量、相互作用、副作用、禁忌、配合禁忌、使用上の注意、保管・管理上の注意、安全上の対策の必要性等の速やかな各職員への提供
製薬企業等からの情報
▪製薬企業の自主回収及び行政からの回収命令、販売中止、包装変更等
▪必要に応じた各職員への周知

第7章 他施設との連携

1.情報の提供

1.情報の内容
医薬品情報の提供
▪入退院時処方(現に使用している医薬品の名称、剤形、規格、用法、用量)
▪一包化など調剤上の工夫
▪過去の医薬品使用歴
▪服薬期間の管理が必要な医薬品の投与開始日等
患者情報の提供
▪アレルギー歴、副作用歴及び使用可能な代替薬
▪禁忌医薬品等
▪コンプライアンスの状況等
2.情報提供の手段
情報提供の手段
▪お薬手帳、服薬情報提供書等

2.他施設からの問い合わせ等に関する体制整備

1.他施設及び薬局への問い合わせ
問い合わせ手順
問い合わせ内容・回答の診療録等への記録・反映
2.他施設及び薬局からの問い合わせ
問い合わせへの対応手順
▪夜間・休日等の対応
問い合わせ内容等の診療録等への記録・反映
地域の医療機関及び薬局との緊急時のための連絡体制の整備

3.緊急連絡のための体制整備

地域の医療機関及び薬局との緊急時のための連絡体制の整備

第8章 事故発生時の対応

1.医薬品に関連する医療安全の体制整備

責任者または管理者に速やかに報告される体制の整備
▪責任者または管理者の不在の場合の対応
緊急時に備えた体制の確保
▪当該施設における体制整備(人・物・組織)
▪周辺医療機関との協力・連携体制
・患者相談窓口の設置
・事故発生を想定した対応手順の作成と定期的な見直しと職員への周知
・自他施設のヒヤリ・ハット事例(インシデント事例)の収集・分析とそれに基づく事故防止対策の策定・実施
・医療安全に関する職員研修の実施
・薬剤師会等との連携体制の確保

2.事故発生時の対応

・救命措置
・具体的かつ正確な情報の収集
・責任者または管理者への報告
・患者・家族への説明

3.緊急連絡のための体制整備

・事故事例の原因等の分析
・事実関係の記録、事故報告書の作成
・再発防止対策あるいは事故予防対策の検討・策定・評価、職員への周知
・患者・家族への説明
・処方医への連絡
・関係機関への報告・届出

第9章 教育・研修

1.職員に対する教育・研修の実施

医療安全、医薬品に関する事故防止対策、特に安全管理が必要な医薬品(要注意薬)などに関する教育・研修の実施
▪薬局内での計画的・定期的な研修会、報告会、事例分析等の実施
▪薬剤師会主催など外部の講習会・研修会への参加及び伝達講習会の実施。外部の講習会・研修会に参加しやすい環境の整備
▪有益な文献、書籍の抄読等による自己研修